和柄の中でも特によく見かける「麻の葉文様」。赤ちゃんが着る産着や和雑貨のデザインとして日常的になじみ深いですよね。なぜこれほどよく使われるのか、疑問に思ったことはありませんか?
実はこの文様には古くから日本人が大切にしてきた「祈り」が込められています。その祈りとは「子どもの健やかな成長」と「災いから身を守る」ことです。なぜ麻の葉文様にはそのような意味を持つようになったのか。この記事では、麻の葉文様が持つ特別な意味や由来を解説していきます。
麻の葉文様とは?
麻の葉文様は正六角形をベースに6つの三角形を組み合わせた、非常に美しい幾何学文様です。この文様の最大の特徴は、どこまでも途切れることなく連続して広がる規則正しさにあります。
麻の葉文様の起源
麻の葉文様は、もともとは特定の名前がつけられていない幾何学文様の一つでした。平安時代の仏像の装飾などに使われるうちに、その形が麻の葉に似ていることから、次第に「麻の葉文様」と呼ばれるようになりました。
麻は世界最古の繊維と言われ、縄文時代の遺跡からも発掘されています。麻は古くから日本になじみのある植物だったことが分かりますね。
身近に見つかる麻の葉文様
身の回りを観察してみると、意外なところで麻の葉文様に出会えます。
・着物や浴衣の柄
・「和」を意識したポスターや広告
・障子や欄間(欄間)などの伝統建築
・最近ではアニメのキャラクターの衣装
麻の葉文様が「縁起が良い」とされる2つの理由
麻の葉文様が「縁起物」として重宝されるのは、大きく分けて2つの理由があります。
まっすぐ早く育つ麻の生命力
麻の葉文様は何よりも「子どもの健やかな成長」を願うシンボルです。これは植物としての麻が非常に強い生命力を持っていることに由来しています。

麻は4ヶ月で4メートル近くも成長し、手間をかけなくても真っ直ぐに伸びる植物です。昔の親は、この麻の成長の早さと丈夫さにあやかり「わが子も麻のように真っ直ぐ健康に育ってほしい」という願いを文様に込めました。
そのため、現在でも出産祝いの贈り物に、この文様をあしらった品が選ばれています。
・新生児が最初に身に付ける短肌着
・おくるみやガーゼハンカチ
・お食い初めで使う食器や小物
大切な方への出産祝いに迷ったときは、この「健やかな成長」というメッセージを添えて、麻の葉文様の品を選んでみてはいかがでしょうか。
三角形の集合体が持つ「魔除け」の力
もう一つ重要な意味は、悪い物を寄せ付けない「魔除け(まよけ)」としての役割です。麻の葉文様の中に隠れている小さな三角形には、不思議な力が宿ると信じられてきました。
日本の伝統的な文様である三角形の連続は「鱗(うろこ)文様」と呼ばれています。三角形が交互に重なり合う構成は、蛇や龍の鱗を象徴し、これには「厄(やく)を落とし、身を守る」という意味があります。鱗文様と同様に三角形で構成され、複雑に重なり合う麻の葉文様は、より強力な魔除けの効果があるとされています。
まだ医療が発達していなかった時代において、赤ちゃんを病気や災いから守ってほしいという願いが、この文様に込められていたのです。
いつの時代でも親が子どもの成長や幸せを願う気持ちは一緒ですね。
麻の葉文様の歴史
麻の葉文様の歴史は非常に古く、千年以上も前から日本人の身近にありました。その歴史を知ると、この文様が日本の文化に深く根差したものであることが分かります。
もともとは平安時代の仏像などに「截金(きりかね)」という技法で麻の葉文様の装飾がされていました。「截金(きりかね)」とは極薄の金や銀の箔を細く切り、それらを接着剤で貼り合わせて、線や三角形、菱形などの文様を描く装飾技法です。仏像の衣や装身具の文様に多く見られます。
このように、宗教的で神聖な意味合いの強い文様でした。
それが一般庶民の間に広まり、大流行したのは江戸時代のことです。当時人気の歌舞伎役者が、舞台衣装に麻の葉文様を取り入れたのです。これをきっかけに、江戸中の女性たちの間で「おしゃれで最先端なデザイン」として爆発的なブームとなりました。
この頃に、子どもの衣服に広く麻の葉文様が使われるようになったと言われています。
そして現代では、麻の葉文様の意味にあやかって、出産祝いの贈り物の定番となりました。
日本人はなぜ文様に願いを込めてきたのか
日本の文様は単なる装飾ではありません。そこには、日本人が長い時間をかけて育んできた、自然や暮らしへの向き合い方が影響しています。
たとえば、鶴や亀は長寿の象徴として知られています。「青海波(せいがいは)」という扇状の波が繰り替えされる文様は「平穏な暮らしが末永く続くように」という願いを重ねたものです。これらはいずれも、強い信仰や呪術というより、日々の生活に寄り添う感覚として受け入れられてきました。
文様が選ばれる理由は、その形が自然の姿や性質を写し取っている点にあります。植物の成長、動物の生命力、波や雲の動きといった自然の現象に、人は意味を見出し、それを文様として取り入れてきました。そこには「願いを主張する」というよりも、自然の力にあやかろうとする慎ましさが感じられます。
麻の葉文様も、こうした文様文化の流れの中に位置づけられます。麻の成長の早さや丈夫さという性質に、人々は子どもの健やかな成長を重ねました。お守りのように、身につけることでそっと願いを託す。その控えめな在り方が、日本の文様文化に共通する特徴なのかもしれません。
日々を平穏に過ごしていきたいという想い。文様は、その想いを静かに支える存在として、暮らしの中に根づいてきたのです。
まとめ
麻の葉文様は、日本に古くからあるとても身近な文様です。そして「子どもへの愛情」と「平穏な暮らしへの願い」という特別な想いが込められています。
時代が変わってもこの文様が消えることなく現代まで愛されている理由。それは文様自体の無駄のない美しさと、文様に込められた想いが、時代を超えて人々に受け継がれているからではないでしょうか。
次に贈り物を贈る際は、ぜひこの縁起の良い「麻の葉文様」を候補に入れてみてくださいね。

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